わたしは貝になりたい
四十五年前に作られた「わたしは貝になりたい」という映画である。ご存知の方もあるかと思うが、あらすじを紹介すると、太平洋戦争の激化とともに理髪店を営んでいた主人公も徴兵され戦争へ行く。そして上官の命令で捕虜となった米兵を殺すのである。戦争が終わって平和な生活に戻った時、主人公は「捕虜虐待」の戦犯として逮捕される。巣鴨プリズンでは誰も処刑されることもなかったために講和条約によって釈放されるものと信じていたが、結局、「私は貝になりたい...」という遺書を残して絞首刑にされるのである。
主人公が米兵を殺したことは事実であるが、当時の日本軍で上官の命令に逆らうことは自分が殺されることを意味したであろう。この映画には強い反戦のメッセージとともに、下っ端の兵士が絞首刑を受けながら、A級戦犯と呼ばれる日本を戦争に導いた人が、戦後、首相や大会社の社長に就いたことへの問題提起もあったと思う。