Naur名誉教授がACMチューリング賞を受賞
ACMの賞にはいろいろある。一番有名なのは、チューリング賞で2005年度は、コペンハーゲン大学のPeter Naur名誉教授が受賞した。あの有名なAlgol60開発者であり、BNF(backus-Naur Form)をつくった一人である。今日までのプログラミング言語設計とその発展の基礎を築いた。「正しいプログラムを書くための方法論」の先駆者で、構造化プログラミング(goto-less programminngともいわれた)の提唱者としても名高い。彼のコンセプトを継承し発展させたことで名をはせたのが、 Floyd, Dijkstra, Hoareたちである。
私にはもちろんDijkstraがいちばん記憶に残る。「ソフトウェアエンジニアリング」の奔りであり、NATO会議で言語の進化を強く提唱し「Fortranなどという言語は死滅するのが早ければ早いほど良い」といった言葉がいまも鮮明に残っている。当時Fortranが科学技術計算用プログラム開発用の唯一の高級言語であり、わたしもそれなしには仕事の生産性が上がらなくなっていたときであったからである。それ以後もFortranは主要言語として使われつづけたが、90年代末頃から使用人口が減少したのではないか。
Algolを一時期研究したことがあり、大規模プログラム開発のときにお世話になったのが構造化設計の手法であり、またPascalやADA研究開発にかかわったときに使ったのがBNFであった。正直いって当時はNaur教授よりもDijkstra教授やParnas教授あるいはWasserman教授といった人たちの方がなじみが深い。それはわたしがIT業界に入るより一世代前の研究成果であったがためであろう。
そうした経緯があったため、Naur名誉教授のチューリング賞受賞はある種の感銘を持って知った次第である。
もう一人なつかしい名前があった。Sun MicrosystemsのAndreas Bechtolsheimである。今年のACM PRESIDENT'S AWARDを受賞した。彼はStanford大学在学中からコンピュータ開発に携わり、その後Sunを共同設立したことで著名である。1995年にSunを辞めて networking switch 開発会社を創業した。その会社をCISCOが吸収合併し同社製品ファミリーを世に送り出すことになった。彼は一昨年、Sun Microsystemsに復職し、Network Systems Groupのchief architect を務めている。