大前研一さんがSNSを開設
昨日、企業人向けのSNS「Agoria」をオープンしたとのニュースが流れた。ビジネスブレ−クスルーの受講生や同窓生を対象としたSNSだそうだ。昨年末に東証マザーズに上場し、資金を調達したのは、SNサイト開発のためだったのだろうか?それともBBT大学院の運営や拡充のためだったのだろうか?どんなSNSエンジンを使っているのか関心がある。
同じ日に、ソフト変革の波が日本にも押し寄せてくることをテーマに講演を行い、大きな社会的影響もあるSNSについても紹介した。消費者社会の変化が遠からずビジネスのあり方に影響を与え、とくに日本のソフト業界に変革を迫るものになるとの警告を発した。その根底にあるのは、オープンソースの流れだというのがわたしの考えだが、その話をする時間的余裕がなく、兆候を話すだけに終わってしまったのが残念である。
今年四月にボストンで開催された会議では、この2年間で確実に状況が変化してビジネスの世界でもWeb2.0アプリケーションの開発と利用が進んでいる、というのが参加者たちの声であった。ITや開発、ベンダーの視点から見ているだけでは潮流が見えない、お客さまのお客様から見たときにどんな変化が起きているのかを知ることが大切だということを、事例を挙げて例証しようとした。しかし、インターネットの接続が悪く、「あちらの世界」で起きていることのデモや「あちらの世界」のリソースを使って、どんなアプリケーションが利用者でも開発できるのかの説明が十分にできなかった。
言葉だけの説明には限界がある。見て触って体験するのが必要であり、自分で使ってみるのが一番である。日本の古い考え方のビジネスパーソンに求められることである。WritelyやiRows, Flock, flickr, del.cio.us, rss feedなどぜひとも自ら使うことをお勧めする。
そして、世の中で何が起きているかをみずから体験して知るために、MySpace, Yahoo!Days, YouTube, Mixi, Greeなどのコミュニティに参加することである。みんなが何を議論しているか、どんな話題でどんな問題意識を抱いているかが分かってくるはずである。自社内の数百人の人たちに聞くのもいいが、いろんな経験と知識をもったひとたちに意見を聞くことも大切である。
昨日の講演内容を、「本当に理解してもらえるか?」ということが一番の懸念である。もっとも話の簡潔に向けて3分の1しか話していないのだから無理は承知である。「なにかが起きている。もっと勉強して調べる価値はある。」、「そういう視点があったか。気がつかなかった。そんな発想で見てみよう。」、「よく理解できなかったが、刺激を受けた。」などということで良しとしよう。
なんだか昔、駐在員だったころ、「こんなことが起きている。日本でも早く着手しないと負けてしまう!」などと日本に報告しても反応がなくてがっかりしたり、一部の人が理解してくれてうれしく思ったりしたときと似たような状況だなぁと苦笑せざるを得ない。
しかし、対象となるお客様が老若男女をとわず、敏感にビジネスの可能性を感じ取り、一気呵成に動く、起業家精神をもった人たちがいることも事実で頼もしく思う。昨日十分に説明できなかったが、米国の二つの事例は、元WebLogic(BEAが買収したIBMの強敵)のScott Dietzenと、Excite創業者のJoe Krausが立ち上げている新しいビジネスである。使ってみれば、いかにそれらが過去に大成功をおさめたソフトよりも優れているか、一般社会の人でも容易に使えるかが分かるはずである。
そうしたソフト(を使ったサービス)が日本に上陸するのは目の前である。いや、もうすでに上陸している。salesforce.com社である。同社はたんなるCRMソフトベンダーではない。ISVソフトを提供するユティリティ企業である。このことは別に整理したいが、ソフト業界構造が変わっており、ソフトの受託開発の市場は縮小していくのではないかとの危機感を持っていただきたい。昨日の話からでは、ビジネスが見えない、という人がほとんどであるかもしれないが、それをきっかけとして視点を変えて考えていって欲しいと思う。
「ブログやSNSの何が面白いのか?」、「それがどうビジネスにつながるのか?」という疑問は最もである。新しいビジネスが思いつかなくても、いまのお客様やあたらしいお客様とのリレーション構築に使えないか?従業員やビジネスパートナーとの知識共有に使えないかと考えるのもビジネスの一環である。
そういう視点でいち早くSNSをビジネスに、あるいはお客さまへの利便性向上のために開設した大前研一さんは、やはり一味違うと再認識した。