LOHAS
DND事務局の山口さんがメルマガに書かれたLOHASの記事が目に留まった。私も思うところを書こうと思ったがそのまま時が流れた。以下は下書きに引用させてもらおうと思って転記していた同氏の記事である。同氏が書いておられるように、「心のビタミン剤となる良質な記事」なので、全文を再掲させてもらった。[2005年12月頃の記事だったと記憶する]
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「LOHAS」。いまさら〜もう遅いくらいの、3周遅れの先頭のようだ-との陰口を覚悟で、静かなブームから爆発的な社会現象へと変貌しつつあるロハス、あるいはローハスとも呼ぶ、その周辺を意識してみると、いやはや、この文字、毎日、目にしない日はない。
ロハスは、米国で生まれたマーケッティングの造語です。Lifestyles Of Health And Sustainabilityの略で、ココロと体と地球にやさしいライフスタイルのこと‐と前置きして、ロハスの大きな特徴は「持続可能性」という意味の Sustainabilityです。省エネ効果の高い製品を買う、環境問題に熱心な企業に投資するといった行動をすることで、企業もロハスに取り組むことになります。地球の環境や社会を持続可能性のあるものにしていくために、日々考え、情報を集め、行動するのがロハスピープルの基本的なスタンスです、というのは「いきいきロハスライフ!」の著者のイデトシカズさん。朝日新聞の11月3日付けの別冊特集「be」の「ロハス的生活のススメ」で、イデさんはそう解説していました。
これはやっかいなことになりました。露天風呂に冷たいソバは、単なる道楽に過ぎず、それをロハスと一緒にしてはいけない、と戸惑っていると、その半面、無農薬で野菜を作り、汗を流して体を大切にしている‐という生活スタイルはどこかロハスに通じるところもあるように思えます。その「be」の7面には、國田かおるさんが、その疑問にズバリ答えていました。
大切なのは、ロハスに正解はないと知ることです。生活をほんの少し変えて、健康で快適な生活を心がけることからはじめてみてください、というからちょっと安心。例えば運動なら、ヨガ=ロハスではなく、「運動に興味がなかった自分が身体を動かそうと思った」ということが重要。運動を通じて「自分を見直す機会になっているか」、「健康に結びついているか」、「ウエアや競技が環境配慮型か」といったことを考えることが、ロハス的なチェックポイントだという。なんだ〜これならかなりいけそうですよね。有用微生物のEMでせっせと畑を作り、それに藍染の作務衣と手打ちソバなんて、いかにもロハス的スタイルにふさわしいじゃないですか、と、ひとり納得してしまいました。
國田さんは、NPO法人ローハスクラブ主席研究員で、環境や社会問題を扱う立場からラジオ出演や雑誌、セミナー講師として活躍しているという。へえ〜NPO法人があるんだ、と思ってホームページを拝見すると、拠点がなんとDNDの秘密基地と目と鼻の先にありました。なんか深みにはまりそうです。
しかし、それにしてもロハスの新聞、雑誌などの露出は連続していて、ロハス情報が席巻している印象を受けます。日経CNBCが人気番組のビジネストレンドで「LOHASアカデミー」を紹介し、日経MJのこの夏のヒット番付では「大関」の格付けをしていました。日経トレンディもひんぱんに取り上げています。
ロハスの火付けは、日経新聞の2002年9月21日付けの朝刊で掲載した、消費者アドバイザーの大和田順子さんの「環境重視の生活 略語LOHAS」、「米消費者、関連商品で起業」という米国事情のレポートがきっかけだったらしい。まあ、その他にもいろいろあるんでしょうけれど‥。
さあ〜しかし、日経だけじゃない。経済誌の週刊「東洋経済」、続いて週刊「エコノミスト」も「ロハスに生きる」を特集、月刊「BOAO」は「きれいは、今、ローハスでつくられる!」、月刊「エル・ジャポン」は「おしゃれなロハス生活」、30代女性をターゲットにした月刊誌「MYLOHAS」も創刊されています。
朝日新聞グループも前述の別冊特集のほか、こちらは持ち前の取材力で読ませます。昨日発売の週刊朝日では、戦前の東大教授で日比谷公園を設計した林学者、本多静六氏にスポットをあてて、没後53年、今こそLOHASな静六に学べ―の記事は、担当した中村智志記者の丹念な取材力と筆力を感じさせる、出色の特集でした。こういう行き届いた記事を読むと、体が軽くなります。良質の記事は、心のビタミン剤になるようです。
その明治の伝説の倹約家とロハスを重ねるところもとても面白く、余談ですが、昭和27年1月に85歳の生涯の臨終の言葉が、「窓を開けよ、風を呼べ、火を呼べ」だったそうです。
この12月号で創刊1周年を迎えた最新号の月刊「AERA English」は、どーんと「街ごとLOHASボルダーライフ」を特集しています。ライターの斉藤真紀子さんが、LOHASが古くから芽を吹き、街ごとロハス的日常が息づくアメリカはコロラド州ボルダーに飛んで、現地ルポ。動きのある生き生きした写真は、カメラの千葉康由さんで、カラー10ページの大型企画でした。
街を歩けば、食材が地元産でオーガニック(有機栽培)だから安全で健康で、そして大地にやさしい「Local&Organic」の食生活を満喫し、環境にやさしく子育てに理想の住まい、それを支えるのはボルダー市内のエネルギー効率が高い「Co−housing」で、住民の強い参加意識が豊かなコミュニティを作り出しているそうだ。そして、車通勤を止めて、街はバスシステムや「Bike Commuting」の自転車専用道路を充実し、バイクでの経路、所要時間、それに消費カロリーを算出するネット検索可能な道路マップが作られているそうだ。
ここは伝統のコロラド大学ボルダー校をはじめ、大学や研究機関が集まる学園都市としても知られ、住民の学歴が高く環境問題に取り組むサークル活動も活発だという。昨日の日経の終面の「交遊抄」は、慶応義塾大学名誉教授の上原喜代治さんが、かつての共同研究者で今回ノーベル物理学賞を受賞することになった米国のジョン・ホール氏との、その研究生活の場がボルダーにある国立標準技術研究所だった‐と懐かしんでいました。
そんなロハスな街に住んでみたくなりますね。街起こしの原則がここにいっぱい散らばっているような気がします。どこに金をかけるか、あるいは住民の意識が街の姿を的確に映し出すのかもしれません。ロハス宣言都市‐なんてどこかがやりそうですね。しかし、ライターの斉藤さんが、LOHASについて聞くと、会う人ごとに「ローハース?」と逆に聞き返された‐という。ロハス的生活が、すっかり日常に溶け込んでしまっているようでした。
もうひとつ、雑誌のなかでも本腰を入れて毎号特集を組んでいるのは、月刊「ソトコト」です。LOHASを実践してますか?健康的で持続可能なライフスタイル、それがロハスという生き方です。今回は、森と音楽の特集―というコピーで、12号は「Lohas/森の音楽」を前面に押し出しています。
イベントも盛んで、先週は東京・神宮外苑でソトコトとFMのJ−WAVEと共催のライブなどを中心にした「ロハス・コンテナ・ヴィレッジ」を開催していました。そして新たな企画は、ヒト・モノ・コトの豊かなデザインを探求する「ロハスデザイン大賞2006」という顕彰制度まで飛び出してきました。それらの情報は、有限責任中間法人ロハスクラブのホームページに掲載されていました。ロハスって何?の問いに答えた「Lohas/book」が月刊ソトコトと電通LOHASプロジェクトの共同企画で発売されたばかりです。
ここまでくるといもうヒットを超えて一大ブームの気配ですね。そのロハスの波は、ついに身近な周辺にまで及んでいます。知人で筑波出版会代表の花山亘さんがプロデュースした出版企画「脱・亜健康宣言!」(発売元は丸善株式会社)、もう来週中には書店に並ぶようですが、その帯に「生活を楽しむLOHASなあなたの新・養生訓!」とあります。本は、EMウエルネスセンター副センター長で医学博士の柯淋(カヒン)さん、それにソトコト編集委員で元TBSの敏腕プロデュサーの小谷章さんお二人の共著となっています。
「亜健康」という概念を問う医学博士で、琉球大学教授でEMの開発者の比嘉照夫さんの指導を受ける柯淋さんと小谷さんの強烈な異色のタッグは、ロハスブームにまた新たな話題を提供してくれそうです。
しかし、どこで何がどう結びつくか、不思議です。静かでスローなロハスブームの陰で、ロハスを語りながら猛スピードで世の中を走り抜ける人たちの生き方には、自戒も込めて同情を禁じ得ません。しかし、その一方で団塊の世代のNPOに動く人たち、静岡県のたぬき村の池田庭子さん、富山県・八尾町でアイ・フィール・ファインを主宰するアロマセラピストの長谷川由美さんらは、環境、オーガニック、教育、それにコミュニティという共通に掲げるテーマからしても、その生き方にしても、すでにロハスなスタイルを確立されていることに気がつきます。もう、それは自然と流れていく、新たな時代の方向を暗示しているのかもしれません。