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NHK男たちの旅路

NHKアーカイブス 1977年 芸術祭大賞受賞作品
男たちの旅路 第三部 シルバーシート

~孤独な老人たちが都電ジャック~

老人たち:
棄てられた人間
必要とされない人間
同情はされるが敬意を表してくれない

皺くちゃのばあさんも5人の子供を生み育ててきた
人間はしてきたことで敬意を表されてはいけないのか

亡くなった本木さんは、ロンドンで優秀な記者だったことがある
何かをしてきた人だということを忘れてはいけない
そうでなければ使い棄てられていくだけじゃないの!

吉岡:
わたしは戦争の体験から抜け出せない男です
みんなは過去は早く忘れろという
あまりにも早く忘れすぎる

せめて一緒に生きた俺だけでも忘れないでいてやりたい
死んだ友人たちの本当の姿を忘れないでいようとしている

その姿を伝えたいとは思うが、言葉では伝えられない
だからといって、こんな風に閉じこもっても仕方がない

老人たち:
吉岡さん、あなたの言うことは理屈だ!
理屈では分からない!
20年後にはわかる!

吉岡:
20年後の覚悟はできている!
歳をとったら分かるというのは、甘えである
言わなければ若いものには分からない
これでは駄々をこねるこどもと変わらない

老人たち:
我々は、押し入れに閉じこもったこどもです
分かってもらおうと思ってやったわけではない

本木さんの遺骨が帰ってきたとき
さびしくて無念で悔しくてね

都電に籠城しようといったとき
久しぶりで目的があった
世話になっている人間はおとなしくしろ、という
しかし、それでも何かをやりたい

≪写真はNHKアーカイブスより≫