Mr. Roseの光彩と青いバラ
日本のバラを育成し、世界に紹介した人がいた。バラ園芸の勉強をしていくと必ず出会う「鈴木省三」(1913-2000)という人だ。生涯に108種の新種を創り出し、数々の国際コンクールで受賞した世界的に有名な人だと知った。紫雲、聖火、かがやき、芳純、乾杯、天の川・・・鈴木省三が作り出し命名した日本のバラだという。
バラといえば赤色だという先入観があるが、もちろんピンクや黄、白などもある。花フェスタ記念公園の資料では、平成16年3月31日現在、1603品種あるそうである。日本生まれのバラが178品種で、そのうち108種が鈴木省三が創ったというから、彼の果たした役割は群を抜いている。
数あるバラの品種のなかでも「光彩」というバラの美しさには目を瞠るものがある。オレンジ色のバラだが、滅多に見られない。Webで検索しても「オレンジ色のばら」は見つけられなかった。「光彩」だと書いてあるが、ブログによっては紅バラだと書いている。中心部分がわずかにオレンジに輝いているバラの写真もあったが、全体がオレンジに輝くバラはなかった。ほとんどが赤とか紅の色である。本物の「光彩」をみたい。
鈴木省三は、「光彩」を開発するために、70年代半ば頃2000万円の分光器を買って色彩の研究をしたそうである。13年尾歳月をかけて世界で始めて、オレンジ色のバラの栽培に成功したという。その「光彩」はアメリカでの国際コンクール(AARS)で優勝した。1988年のことである。ちなみにアメリカでは光彩ではなく「Mikado」と命名された。1940年以来、AARSで受賞した日本人は鈴木省三ただ一人だ。
もっとも日本の花はやっぱりサクラで、バラは西洋の花で、日本の家庭でもバラが栽培されるようになったのはこの数十年くらいの歴史しかない。薔薇の歴史によれば、ヨーロッパでバラの育種の歴史に大きく貢献したのがナポレオンの皇后ジェセフィーヌで、1829年のカタログには4000種を超える品種があったという。
何千種もあるバラの品種のなかで、青色だけは見たことがない。青色の元であるデルフィニジンという色素がバラにはないそうである。ところが昨年に開催された国立科学博物館・特別展「花 FLOWER〜太古の花から青いバラまで〜」で、青いバラが展示された。
日本人が好む花の色に青や紫があり、私も好きだ。アジサイ、ツユクサ、ハナショウブ、ヤグルマソウなどがある。科学的には、さまざまな色の中でもっとも複雑な仕組みで発現するのが青色だそうだ。青い色素はなく、アントシアニンという赤紫の色素が、淡黄色の成分や金属が複雑に作用して青色の花になるという。複雑な心情の日本人が好む暗黙の理由かもしれない。ともあれ、青い色の花の仕組みが解明されているのは、ツユクサとヤグルマギクだけだそうだ。この仕組みを解明したのは日本人で、花の色の研究は世界の中で日本が一歩リードしているということだ。
さきの特別展で紹介された青いバラは、バイオテクノロジーの成果である。サントリの研究所で、遺伝子組み換え技術を使い、14年の歳月を経て2004年に成功したという。販売は来年の予定だそうだ。
・鈴木省三 - Wikipedia
・世界の薔薇コンクールと受賞花
・日本のバラのリスト
・さにこのばら園
・薔薇のベランダ