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我が子と生身で向き合え

 ネット版「不幸の手紙」が横行していると警鐘を鳴らしている記事(2005年11月11日 読売新聞)を読んだ。ネット世界での匿名社会の恐さを知らない親の世代とPC/Internet/携帯が急速に普及した時代に育つ子供との間の意識のギャップが大きい。大人が知らないところで、子供たちが無差別被害にさらされ、その心を蝕んでいる事実に気づくべきである。

 ネット版チェインメールを受け取ったときは友人・知人など無差別にメールを転送して他の人の心まで蝕むような行為をすべきでない。「チェーンメールを転送しないと怖い」という子どものために、日本データ通信協会迷惑メール相談センターがチェーンメールの転送先の専用アドレスを用意している。

shika001@ezweb.ne.jp (002も可)
dake001@docomo.ne.jp (002〜005も可)
kuri001@t.vodafone.ne.jp (002〜003も可)

ネットが子どもに及ぼす影響について警告し続けている作家、柳田邦男さんの言葉を引用しておく。

小学生男子の半分以上が、テレビ、ゲーム、ケータイ、ネットなどに平日でも4時間以上接し生身での接触が希薄になっている。幼い時から仮想現実で何時間も過ごせば、次第に仮想が現実になっていく。ゲームやパソコンの中で匿名の別人格となった子どもは、全知全能になった感覚に浸る。

 幼児期から少年期にこの経験を繰り返せば、人格がゆがみ、自己中心的になって簡単に他者を傷つけるようになる。言葉も心も育たない。この異常さが今や普通になってしまった。

 通常の会話なら、人は相手のメッセージの8割を、表情やしぐさ、話し方などから得る。だが顔のないネットでは、表面的な言葉だけが強く、一方的に発信される。大人なら自分に向けられた攻撃を無視することもできるが、子どもは全身で受け止めてしまい、疑心暗鬼や対人恐怖に陥る。最後に待つのは、人間関係の崩壊だ。最近の少年による重大事件には、ネットが深い影を落としている。

 子どもを匿名や仮想現実の世界に放置してはいけない。時代錯誤と言われようが、生身で向き合う姿勢が重要だ。家庭では週に1回、ノーケータイ、ノーパソコン、ノーテレビの日を作ってほしい。月に1度は野山で遊ばせ、幼い子には毎日絵本を読み聞かせたい。守るべきモラルを、人を傷つける怖さを、理屈ではなく体に覚えさせる努力を本気でしてほしい。現状は既に手遅れに近い。見えざる心の危機に、日本人は早く気づかなくてはいけない。