企業内ブログの是非
ブログの制作をはじめてから2年が過ぎた。もともと情報発信と知識共有のツールとして日々の経営に使うべきと考えて、最新の技術やソフト、利用動向を調べはじめたのが契機である。そのことはこのブログの初期の記事に書いた。ある企業での導入を薦めたが、保守的な経営幹部たちのマインドが異なり遅々として進まない。若手の社員たちは新しい変化に機敏に反応するが、全社的に活用するには経営幹部のリーダーシップが必要である。
アメリカ的に「やって見せねば」と思い、自ら実践することにした。最初は、むかしからのホームページを整理し、これらを新興ブログサイトに展開することを考えた。Geocities, Angelfire, Lycos, Xoomなど数多くのISPサイトで試しに作ったHPのほとんどは、M&Aの嵐のあとに消えていった。残ったHPのバックアップと新しいWebの構想を練った…というのは大げさで、電車やトイレの中で考え、暇を見つけていろんなサイトでブログを開設して試行した。
むかしと違って実に簡単に開設、運用できるようになった。ものの10分もあれば新しいブログを開設でき、すぐに運用が開始できる。 そうした利便性と迅速さが多くのユーザを即席ブロガーにしている。ただ、アメリカのジャーナリズムや政治、起業家、経営者が注目したブログの社会性にはまだ気づいていない人が多いようで、即席ブロッガーたちは「日記もどきのブログ」の域にとどまっているようである。伝統的・保守的な企業の経営者たちの認識も似たようなものであろう。
自らが「考えて、書いて、情報を社内外に発信する」ということに慣れていないのがひとつの阻害要因となっているのだろう。社内の会議だけでなく、お客さまに提案したり解決策を説明したりするときも、使うツールはパワーポイントが主流である。要約しスライドにまとめるのは得意でも「文章を書く」ことに慣れていない。知的作業のプロであるコンサルタントといえども、事情はおなじである。パワーポイントが思考結果の表現ツールであるだけでなく、逆にそれが思考の枠を決めることになっているのではないか。
思考のプロセスには、じつに数多くの言葉の選択があり、論理と情緒の積み重ねと試行錯誤がある。それは言葉を文章にする、書いて見なければ、考えられず表現できないことがたくさんあることを意味している。この訓練が、日本の教育・訓練体系の中に組み入れられていないのは残念である …などと嘆いても仕方がない。
実践という意味では、すでに企業のホームページはXoopsを活用したCMSを採用して運営をはじめた。グループ内や個人レベルでの情報の整理と発信、共有にはMovable Typeを採用して試行を始めた。しかし、なぜ日本の経営というのは感度が鈍くスピードがでないのか?二ヶ月でできるのが二年以上かかるというのでは変化に対応できない。人が変わらなければ何も変わらないものなのだろうか?環境の変化を敏感に感じ取り、自らの考えを新たにして新たなやり方を実践していくことが求められる。